こんな夜に・・・ やっちまったな。

「なかなか来ないなー。」ふと独り言。

待ち合わせの時間の19時まであと2分。

 

今夜は以前家を建てていただいたお客様からの依頼。

洗濯機用のカランの交換のため、設備業者の社長さんを待っているのです。

 

今夜は阪神タイガースが負けて、カープが勝つと優勝です。

早く仕事を終わらしたくて、うずうず。

玄関先でもう10分ほど待っている。

 

「まさか、酒飲んで忘れとるわけじゃ無かろうの。」と思っていたところに、社長さんの軽自動車登場。

 

お客さんの駐車場には入れないので、ターンして路肩に駐車するつもりのようだ。

スピードと車の挙動がおかしいと思ったその瞬間。

「キー。ガシャン。」

 

「まさか、やっちまったのか。このくそオヤジ。アホか?」

「早く帰って、カープが見たいんじゃい!」

「なぜこんな夜に車のタイヤを側溝に落とすかなー。」と心の声です。ハイ。

 

とりあえず、お客さんの仕事を最優先。

カランの交換はたった5分で終わっちまったど。

 

何やらオヤジ(もう社長とは呼びません。)電話している。

社員の人に助けに来てもらおうとしているらしい・・・

 

オヤジ、がっくりした顔で近づいてくる。

「ビール飲んで、カープの試合見とるんで絶対行けん。」と断られたとのこと。

「おいどんだってオヤジをほったらかしにして帰りたいもん。カープが優勝するかもしれんので、今夜は。」

 

そうこうしていると、見かねたのか、お客さんが大きなジャッキを持ってきてくださった。

お客さんは、車関係のお仕事をされていたのである。

ジャッキを使うと、すぐに脱出成功。

 

カラン交換の倍以上時間がかかったど。

 

お礼を言ってると、オヤジがおいどんに

「車を救出していただいたので、今夜の仕事の費用は請求できません。」とのこと。

そりゃまーそうですな。業者が請求しないのに、おいどんも請求するわけにいかないので、

「工事代は車を救出していただいたのでいただけません。」と告げる。

 

喜ぶお客様と別れて、オヤジの車が去っていくのを見届けた後、車に乗り込む。

「今夜はオヤジのおもしろいコントが見れたんで、まあええか・・」

「お客さんも喜んでくれたし・・・」と独り言をつぶやきエンジンをかけるおいどんでした。

 

 

 

カープが25年ぶりに優勝するかもしれなかった ある夜のお話です。

 

 by

春から秋にかけては、カープが見逃せない

たたかう現場監督