地上の星

もう十五年も前のお話です。

雪がいつ降り始めてもおかしくない、冬のとある日の午後。

図面をみていて間違いに気づきました。

慌てて現場の状況を確認しに行くと、間違いの有った場所は、ほぼ鉄筋工事と型枠工事が終わった状態。

非常に情けないのですが、間違いを協力業者の職長さんに告げる。

一週間後に生コン打設を控え、ぎりぎりの工程の中、頑張ってくれている業者につたえることはつらかった。

生コン打設は伸ばすことできんでしょう。」と工期が厳しいことをわかってくれている二人の職長。

「今から手直しを始めましょう。」と平然と言ってくれました。

午後3時過ぎから鉄筋の解体。

「大工さんが型枠を直してくれたら、すぐに配筋しますんで、飯食って仮眠します。」と鉄筋職長。この時すでに午後6時半ぎ。

現場の1か所だけ煌々と照明がたかれ、型枠の解体、加工、再取り付けが始まる。

(現場の周囲に民家が無くて助かった・・・)

2階の現場事務所に型枠大工の職長が上がってくる。

「終わりました、今日は帰ります。」の一言。

「ありがとうございます、おつかれさんでした。」とおいどん。

 

入れ替わりに今度は鉄筋職長が上がってくる。

「今度は俺ら行ってきます。」と鉄筋職長他1名。外は凍てつく午前零時。

 

朝5時前、鉄筋職長から「できましたよ。」の言葉。

もう感謝の言葉しかありません。何度も感謝の言葉を言うおいどんに、

「今日も頑張らんと行けんので、少し寝ます。」と車の中へ・・・。

ちょっと泣きそうな気持になり、このことは一生忘れられないだろうなと思いました。

(業者の人もでしょうが・・・。)

徹夜に近い状態で、しかもこちらのミスにも関わらず、当然のことのように作業をしてくれたこの2業者はおいどんの宝物です。

しかも、その作業に対する請求をしてくれと頼んでも、不要として請求してくることはありませんでした。

(ささやかながら、のちにお返しさせていただきました。)

いまでも投光器に照らされた、あの夜の光景は忘れられませんね。

この人たちこそおいどんの【地上の星】なのです。

 

PS

この現場にはもう一人、おいどんの【地上の星】を見つけました。

この人は左官の山さん。

日曜日に書類や図面関係で仕事していると、ふらっとやってきて、

「天候が悪くて思い通りに仕事が進んでないんで、ちょっとやってきた。」と一人で現場に入っていく。

結局夕方五時まではしっかり仕事しちゃってる。

「会社にはここに来とるの言わんし、家におっても暇じゃけー、勝手に来とるんよ。」と飄々としている。

金も要らん 厄介な人がここにもまた一人。

もう何回も休みの日に現場に来てくれている。

この人なんかおいどんにとって《左官の神様》みたいな人です。

(当然、山さんにも、ささやかだけどお返しをしました。感謝。)

 

 by

いつも協力業者の人に助けられている

たたかう現場