夏休みの宿題 今になって話せる事

あと残り一週間となった夏休み。

中学校二年生の長男坊が宿題に追われている。

夕方になって、いきなり絵を描き始める準備が始まる。

何やら動物の絵を描くそうだ。

動物園に行ったことにして、ネットで調べた動物の写真をプリントアウトし、描き始めた。

レッサーパンダの写真であった。

描き始めた下書きを眺めると、彼にはおいどんの絵の才能が遺伝しなかったらしい。

さっさと終わらせたいらしく、絵の具を取り出し、色を塗り始める。

出来具合が少し気になるおいどん、時々覗いて確認。

描き疲れたのか、お風呂に入ってくると席を立つ長男坊。

「パタン。」と扉が閉まると同時に、おいどんと嫁さんが絵をのぞき込む。

「へたくそやなー。」嫁さんの第一声。

声には出さないが、心の中でうなづくおいどん。

あまりにベタな絵の具の塗り方の為、フワフワしたレッサーパンダのかわいさがまったく感じられない。

「これじゃ、濡れたネズミのようじゃね。」さらなる嫁さんの追い打ちの言葉。

(救いようがない絵のへたくそさか・・・。)

「こりゃあんまりにもひどいじゃろー。」と言いながら嫁さん筆を手にする。

太い筆に絵の具を付けて、軽く真上からトントントンとたたくように色を付ける。

あら不思議。レッサーパンダのモフモフ感が出てきました。

「ほら全然違うじゃろー。」と嫁さん自慢げです。

しばらくして長男坊がお風呂から出てくる。

「もう完成したよ。」と嫁さん。

「なんで勝手なことするん。俺 この絵 書き直す。」と言い始める長男坊。

なんだかんだと彼をなだめ、何とかこのまま絵を提出することに成功。

その後、すっかりこの絵のことを忘れていたおいどんと嫁さん。

数か月後。

「あの絵、金賞もらったよ。」

「ゲッ、本当なの?」

「ほら。」賞状と動物園の冊子に見たことのある絵が、掲載されていました。

(一生の記念になりましたな。)

心境は微妙なところもあるのだろうが、喜ぶ長男坊を横目に、親が手を出してよかったのだろうかと、複雑な気持ちのおいどんがそこにいました。

 

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期末テストの点が良くなかったのにもかかわらず

美術の評価が4だったのは(5段階評価)

きっとこの絵のせいに違いなと思う

たたかう現場監督