頼むど! 勘弁してくれよ。

急に電話が鳴り、急遽現場から出かけなければならなくなった。

事務所を出ると、業者の資材搬入車両が駐車場に入っており、おいどんの車はとても出せる状況ではなかった。

よく見ると、後輩のイワゾー君の軽トラックなら何とか出れそうな場所にある。

イワゾー君に鍵を借り、軽トラに乗り込むおいどん。

「汚ねー車だ。」乗り込んでの第一声。

菓子パンの袋やジュースの空き缶、使用後のマスクにぐちゃぐちゃになった書類など、助手席の足元に転がっている。

「乗ってるだけで病気になりそうな車じゃのー。」とまたまた独り言。

運転席のドアポケットには、 『また来てね! るみ。』などとボールペンで書かれた、おそらくキャバクラでもらった名刺が一枚。

まさかこの軽トラックで行ったわけではないのだろうが、会社の仕事車にこの名刺はダメじゃろーとおもいつつも、いざ出発です。

 

お客さんのところに到着し、名刺を渡して要件をお伺いするおいどん。

なんと清楚で、きれいな女性だなんて、心の片隅では思いつつ、

「それでは失礼します。」とあいさつを終え、車に乗り込もうとした時。

一枚の紙きれがひらひらと舞い落ちました。

「これ落とされましたよ・」と紙切れを手にするお客様。

「あっ、すいません。ありがとうございます。」とおいどん。

 

「この馬鹿たれイワゾーめ・・・。なんでこの場面でキャバクラの名刺が落ちるんだよ

!」

「絶対見られたよね! 『また来てね! るみ。』って書いてあるところ・・・。」

「これはおいどんがもらった物ではないのですだ。」

「おいどんは無実です。」なんて言えるはずもなく、急にどんよりと気まずくなる雰囲気の中、それを振り払うように車を発進させる。

車の中・・・

「頼むど! 勘弁してくれよ。」と一人つぶやくおいどんでした。

 

by

聖人君子に最も近い漢(おとこ)の為

キャバクラの女の子から名刺などもらったことがない

たたかう現場監督